はるかぜ蕪村 画本・春風馬堤曲
B5判変形/上製ケース入り
本文56頁/オールカラー
装幀=金井田英津子
制作協力=高林昭太
プリンティングディレクター=細野仁(東京印書館)
発行日:2025/6/30
定価:4500円+税
ISBN978-4-88032-509-5
C0071
〈絵と文〉金井田英津子
〈原 作〉与謝蕪村
作者プロフィール
金井田英津子(かないだ・えつこ)
画家、版画家、装幀家。群馬県桐生市生まれ。
個展、国際版画展などで版画作品を発表するかたわら
愛好する近代日本の文学作品を画本にしている。
画本の作品=萩原朔太郎『猫町』、内田百閒『冥途』、夏目漱石『夢十夜』、
井伏鱒二『画本 厄除詩集』。
装幀挿画の作品=長谷川摂子『人形の旅立ち』、北村恵理『ハコの牧場』、
斎藤惇夫『哲夫の春休み』「河童のユウタの冒険』など。
絵本の作品=小澤俊夫再話『三まいのおふだ』『ねずみのよめいり』
『とら猫とおしょうさん』『仙人のおしえ』『うらしまたろう』など。
2004年、『人形の旅立ち』で、第18回「赤い鳥さし絵賞」、第38回「造本装幀コンクール審査員奨励賞」受賞。
*「現代作家の軌跡訪問」(ART BOXのホームページ)のインタビュー
http://www.artbox-int.co.jp/voice/interview/kanaida.html#top
与謝蕪村 (よさ・ぶそん)
俳人、画家。松尾芭蕉、小林一茶とともに江戸時代を代表する三大俳人の一人。1716年、現在の大阪郊外、淀川に近い毛馬村で生まれる。1777年、61歳のときに俳詩と言われる斬新な作品「春風馬堤曲」を執筆し、藪入りの娘に託して幼い頃のことや故郷への思いを綴る。1784年没。
本書の紹介
日本文学史上、類例ない傑作が画本となり蘇る!
春、また春……大阪・淀川沿いの春景色のなか、
藪入りの少女に与謝蕪村自らの思いを重ねた郷愁の俳詩「春風馬堤曲」――。
日本文学史上、類例のないこの蕪村の傑作は、
詩人・萩原朔太郎に「魂の哀切なノスタルジア」と高く評価され、
いまも私たちの心を揺さぶってやまない。
さまざまな心情が交錯する「郷愁」と、移ろいゆく春の時を、
画家・金井田英津子が、二世紀半の時を超えて、
画本として繊細かつ詩情ゆたかに描く。


〈参考〉「春風馬堤曲」について(『ブリタニカ国際大百科事典』から一部抜粋)
母と弟を残して大坂に奉公に出て3年ぶりに帰郷する少女が、大坂から郊外の長柄川べりに出て水と戯れ、顔見知りの茶店の老婆に会い、やがて春草のなかに摘み取ったタンポポの乳汁から慈母の恩を回想し、3年の無沙汰を反省して心沈みつつ道を急ぐうち、たそがれのなかに弟を抱いて自分を待つ白髪の老母を発見する。
あとがき(抜粋)
若者が独り立ちしようとする時、生まれ育った故郷に抱く心情は複雑です。ふるさとの懐かしさ、慕わしさ、しかしそこには桎梏があり、親を離れる寂しさ、兄弟を置き去りにする後ろめたさなど、いくつもの交錯した感情が揺れているでしょう。そしてそれらは後日、帰郷するときの心情に分かち難く結びついています。
蕪村の筆は、はじめて故郷に帰る少女の移ろいゆく心情を、陽光うららかな春景色の中にみずみずしく表現していて、若い頃からこの詩を愛好してきたわたしはいつも同じ「春、また春……」のところで感極まってしまうのです。